コラム

「叱らない育児」なんて大間違い!正しく叱れる親になろう

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 「叱らない育児」なんて大間違い!正しく叱れる親になろう
ほめる子育てをしたいのに、つい子どもを叱ってしまう自分は「だめな親」……最近、こんなふうに思っている人が増えているような気がします。でも、それは正しい考え方なのでしょうか。
子どもの発達を専門とする、お茶の水女子大学の菅原ますみ先生が、迷えるママたちに指南します!

「未熟な人」を導ける「大人」になることが大事

ほめて育てるのがすばらしい子育てで、叱るのは「だめ子育て」? いいえ、しつけには両方が必要です。必要なときに叱られることは子どもの権利ですし、正しく叱ることは、大人としての責務なのです。

そもそも「しつけ」とは何でしょうか。

人間社会には、無数のルールがあります。法律と呼ばれるルールはもちろん、道徳的ルール(道路にゴミを捨てない、仲間はずれにしない)、慣習的ルール(あいさつする、手づかみで食事をしない)、さらには各家庭のルール(ゲームは30分まで、寝る前にふろに入る)など、無数のきまりがあります。

にもかかわらず、人はルールについては「まっさらの状態」で生まれてきて、誕生後数年でたくさん学ばなくてはいけません。このルールを教える作業が「しつけ」です。しつけ開始の適齢期は、「やりたい」という気持ちに身体的な能力(歩ける、話せる)がともなってくる1才半から2才ごろです。

ところが、この時期の子どもはイヤイヤ期まっさかりの発展途上人。「自分が!」「自分で!」という自己中心の世界で生きているし、マイルールこそが世界の掟で、「人の気持ち」なんてまだわかりません。そんな子に物事の道理を教えるのですから、親は本当にたいへんなのです。

それでも、親は社会と子どもとの間に立ち、ルールを教え、違反すればイエローカード、レッドカードを出さなくてはいけません。それは社会の先輩としての親の義務だということです。

「虐待もどき」の叱り方だけは絶対にNG

一方で、子どもをしつけるときに絶対にしてはいけないことがあります。それは「イライラを発散するため」「怒りをぶつけてスッキリするため」に叱るということです。もしそういうことがつづくとすれば、それは「虐待」に限りなく近くなります。

「虐待」という日本語はなにやら恐ろしい響きをもっていますから、命を奪うような暴力や、食事を与えないなどのネグレクトをイメージしがちです。

しかし、現実の虐待でもっとも多いのは「心理的虐待」です。心を傷つけるような暴言やおどし、無視、拒絶、きょうだいとの激しい差別などなど。そう考えると、日常の叱り方を間違えてしまうと、虐待に近い行為になってしまう可能性は十分にあるのです。実際、児童虐待の件数は年々増加し、平成27年度には初めて10万件を超えています。

「たたく、ける、どなりちらす、長時間叱りつづける」といったしつけは、虐待につながりやすいだけでなく、叱るという意味においてもマイナス効果しかない間違った方法だということを、まずは心に刻んでください。

親に権威がないと、子どもはフラフラ人間になる


子どもを正しく叱ることは、「社会のルールを教える」という意味だけでなく、子どもの人生に自信と勇気と自律心を与えるという意味でも非常に重要なことです。

少し学術的な話で恐縮ですが、今から50年ほど前に心理学者のバウムリンド博士という人が提唱し、さらにその後多くの学者の臨床研究によって証明され続けていることがあります。少しくわしくお話しましょう。

バウムリンド博士は、子どもを3種類に分けました。

①自信があり、自分をコントロールでき、探求心のある子。
②引っ込み思案で、ふさぎがち。感情的になりやすい子。
③自信がなく、衝動のままに動く子。

親であれば、だれでも①のように育って欲しいと思いますよね。いろいろな親子を調べたところ、①②③のタイプの子の親には、それぞれ共通点があったのです。

①の子の親は「バランス型」。厳しく叱ることもあるけれど、あたたかさがあり、子どもを受容している。
②の子の親は「虐待もどき型」。子どもに厳しいうえにあたたかさがなく、子どもとの心の距離もある。
③の子の親は「気弱型」。子どもにとても優しく受容的ではあるけれど、子どもが悪いことをしても叱れないし、厳しくできない。


つまり、子どもの性格は親の関わり方と深く関係しているということです。
自信があり、自己コントロール力があり、探求心のある①のような子どもを育てたければ、厳しいだけでもやさしいだけでもいけません。子どもに愛情を伝え、子どもをありのまま受容しつつも、ダメなことはダメとしっかり叱れる親であることが望ましいのです。

そんな親を、バウムリンド博士は「権威ある親」と呼びました。

どうせなら、大人になってからも信頼される親でいましょう

この「権威」があるからこそ、子どもは親を尊敬し、「この人を信じて社会を学ぼう」と思えるのです。幼いうちにこのような絶大な信頼が培われれば、子どもは何才になっても親を手本としながら、自分の人生を自立的に歩んでいくことができます。それは子どもにとって幸福なことです。

たとえば進路を決めるとき、「うちの親は、自分の希望を押し付けることはないけれど、相談すれば適切なアドバイスをしてくれる」と信じていれば、子どもは親にためらいなく助言を求めるでしょう。そのうえで「自分はどう生きていきたいのか」を考えられれば、主体的に人生を選びとる力も身につくはずです。

どうせなら、大人になったわが子にも信頼される親になりましょう。

文/神 素子


『その叱り方、問題です!― 「個性診断」でその子に合った「叱り方」がバッチリわかる!』(菅原ますみ著/主婦の友社刊より)

お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授。子どものパーソナリティー発達と精神病理を専門とし、0才~30才までの発達を追う、日本では数少ない長期にわたる縦断研究をおこなう。働きながら子どもを育ててきた先輩ママでもある。
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